第 1 回
――筏(いかだ)の仕事をしていたのはいつ頃ですか?
40年代、昭和ね。
その頃は東南アジアから外材がどんどん入ってきた。
フィリピン、インドネシアとか、
マレーシアのサンダカンとか、有名なのよ。
等級でいえば一等ものが一番出ていたもの。
それこそ1メートル以上の直径で、
長さ30メートルくらいあんのが相当入ってきた。
1日に3杯ぐらいずつ荷役やってくるから、忙しい、忙しい。
最盛期の頃で、景気が良かった。
――外材を積んだ船が東京湾に入ってくると、筏師の出番と。
本船がさ、東京湾に入ってきて沖合に停泊するでしょ、
そうすると、何艘か引き船がアバ(足場)を引っ張って、
俺らは足船(あしぶね)に乗って行くわけ。
行ったらアバを本船の横につけて組んじゃって、
足船はアバの横につける。
30p幅の米材(米国産の木材)なんかで組んだ1mくらいの幅で
長さ30mくらいある。船の片側に四角く組んでね。
筏師がアバを歩いて作業をするんだ。
アバで囲んだ中に材木を降ろすでしょ、
アバがあるから材木が流れないわけ。

――足船というのは、どういう船ですか?
沖で仕事するときに、弁当を食ったり休憩するための船。
冬は重油でストーブ焚いて、中はあったかいのよ。
足船には動力がないから、筏師を乗せて引き船が引いていくの。
材木降ろすのにだいたい1日掛かりになっちゃう。
朝7時ころ出てきて、横付けして
だいたい3時頃には終わるのかな。

待機中の引き船と足船(右端)。船の横に浮かべてある長い板が「足場」。
――船から材木を降ろすと、筏に組むんですね。
うん。材木を全部降ろして、
1本ずつカギ(鉤)で引っかけて寄せて、
ワイヤーをずーっと張っちゃって、
マタカン(又環)ていうので材木を1本ずつ留めていくの。
縦に組んだり、横に組んだりして。
浮くヤツはいいのよ、まだ。
材木によっちゃあ、堅くて比重のあるのは
シモり材っていって沈んじゃう場合もあるから。
水に潜っちゃうことを「シモる」っていうの。
そういうのは浮く材木の上に乗っけたり、
クレーン船入れて吊りながら筏組んでいく。
組み方がまるっきり違う。

長鉤を使って筏の上で作業をする筏師。手前に見える、ワイヤーを通している逆U字型の留め具がマタカン。
――組んだ筏を、今度は引き船で引いていく。
筏に組んだら、貯木場に持ってかなくちゃいけない。
引き船が引っ張っていくの。
引き船のことを蒸気(じょうき)って呼んでたな。
ワイヤーで筏をずーっと引っ張って、
筏の上に筏師が乗っかっていくんだけど、
たまにバレそうに(ばらけそうに)なる、波で。
そういう時は筏の上をポンポン飛びながら、
ワイヤーが外れたら、その上に乗っかって修理する。
筏師は長い竹ざおの先に鉤(カギ)がついた長鉤を持ってて、
材木がバレちゃわないように引っ掛けて寄せる。
で、ワイヤーをグッと引っ張って、
また留めて。力仕事なのよ。
筏が引っ張られているときにバレたりなんかすると大変。
バレたら、引っ張っている方もスピードゆるめる。
ゆるめて筏が直るのを待ってるの。

――そういう時って、引き船に筏師の声は届くんですか?
声でっかいよ、筏師は。いつも怒鳴ってるから、でっかいよ。
現場の奴らはすごいぞ。
――声がでかくないと務まらない。それにバランス感覚もないと。
そうよ。雨の日だってあるわけだからさ。
合羽(かっぱ)着て、一応スパイクは履くけどね。
長靴に鋲(びょう)を打ってあって、
そういうのをみんな履いてるけどね。
川並(かわなみ)って呼ばれてた江戸の筏師は、
フンドシに半纏(はんてん)で勇ましかったけど、
俺らは長靴履いて、長鉤、ハンマーを持って、
それにマタカンを入れる袋を腰にくっつける。
ハンマーもマタカンも鉄だから重い。
それで筏の上をポンポン飛ぶんだ。
――事故なんかが起こることも……。
本船から材木を降ろすときに、
クレーンのワイヤがハネたりして、
当たって大ケガすることもあったし、
筏を引っ張っていくときにバレちゃって、
川に落っこったりする。
だから、危ない、危ない。
嵐の時が一番大変なの。
あんまり風吹いちゃうと、
本船荷揚げは中止になっちゃう。
(つづく)
筏師(いかだし)のお話 火焚進(ひだきすすむ)さん 第2回
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